「まかない」「ただめし」の繁盛店はこうして始まった ー 小林せかい「未来食堂ができるまで」

2019年8月12日月曜日

転職・起業・副業

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東京工業大学を卒業して、IBM、クックパッドでシステムエンジニアとして勤務した後、飲食ビジネスに転身、と書くと、華やかなレストラン・ビジネスとかオーベルジュといったところを想像してしまうのだが、この本の筆者が開店した「未来食堂」は席数12席の小さな店。しかもメニューは、一種類の定食だけという、かなり変わった定食屋である。


ところが、この店、経営も順調である上に、ここで始めた「まかない」とか「ただめし」とか「さしいれ」のシステムで、飲食関係だけにとどまらず、日経をはじめとしたマスコミからも注目になっているという話題の店となっている。


本書は、その「未来食堂」を経営する筆者が、クックパッドを退職し、未来食堂を開店するまでの奮闘をブログにアップしていたものを中心にまとめた「起業本」が本書『小林せかい「未来食堂ができるまで」(小学館)』である。


【構成と注目ポイント】


構成は


第1章 食堂をやろうと決心

第2章 未来食堂、始動

第3章 開店、それから

おわりに

巻末付録 1 未来食堂 事業計画書

     2 まかないガイド


となっていて、もともと飲食店を開きたいと思っていたのは中学生の頃であったらしいのだが、この頃の「夢」というのは大概、成長すると忘れてしまうものなのだが、クックパッドに入社後、社内のキッチンで仲良くランチをつくる女子社員ふたり組を見て


その姿を見たとき、私はとっさに「わびしいな」と思ったのです。

なぜなら、その傍らには、仕事が山積みでランチを食べる時間がなかなか取れない人たちがたくさんいるからです。

コンビニの弁当やおにぎりを食べて、なんとかお腹を満たしている彼らを尻目に、ふたりだけの世界で凝ったランチを食べている彼女たちの姿は、私にはとても貧しい情景に映ったのです。

(略)

自分が食べるものはなんでもよかったのですが、私の周囲にいる人たちが、わびしい食事をしていることに、「このままではいけない」「入社したばかりでも、私がやらなければいけない」と強く思いました。

そこで、ある日、「まかないランチ」を作ることを思い立ったのです。


といった思いで行動を起こし、それが「店を持つ」ことにつながるあたりは、普通の人とは違う「行動力」の熱さを感じるばかりである。


その熱さは、開店までの「準備作業」にも表れていて、料理と店内まわしの修行のため、料理修行を始めるのだが、修行する店の数が半端ないのと、その店が「割烹」などの料理を提供する店だけではなく、「サイゼリヤ」や「大戸屋」といったチェーン店も含まれているというユニークさが、この人の発想の凄さである。


そして、普通なら、「チェーン店で料理修行?」と思いがちなのだが、筆者によるとチェーン系飲食店で働く理由は、そこに


▼効率的なオペレーション

▼効率的なオペレーションガイド

▼食品衛生などのリスク管理

なぜその飲食チェーンがヒットしたのかはさまざまな要因がありますが、少なくとも「効率的」で「今まで大きなトラブルがなかった」ことは絶対の条件として挙げられます


といったことがあるようで、自分が持つであろう店が、少人数の人間で店を運営するため、「効率的なオペレーション」が必須だからと分析しているあたり、「料理人やシェフになる」ということと「店を持つ」ということの違いを感じさせて、ここらは「ビジネスマンとしてバリバリ働く」ということと、「経営陣として企業を運営する」ことの違いを見るようで興味深かいですね。

この経験から、サイゼリヤなどのオペレーションの極意的なものを筆者の言葉でアドバイスされているのだが、ここらは原書で確認していただくのがよろしいでしょうね。


そして、この後の店のコンセプトであるとか、立地の選択や什器の手配などなど、実際の苦労話が惜しげもなく公開されているので、店を開きたい、と思っていく向きには参考になること請け合いである(と思います)。


一般にこうした繁盛店を興した人はあまりそのノウハウを公開しないものなのだが、


私はもっと新しいあり方があると思います。”知識のシェア”です。

そんな思いで、さまざまな飲食店の厨房で学んだことを分け合う「料理人が教えるシリーズ」を書き始めたのですが、このシリーズは当プログでも人気コンテンツとなりました。

アクセス数の約半分を「料理人が教えるシリーズ」が占めます。

「プロの知識(=ふつうは隠されているもの)が公開されれば、みんな喜ぶのだな」と実感しました。

そして、この実感は「いずれ事業計画書は公開したい」と思う自分を後押ししてくれました。


といった筆者のスタンスは、後からやってくる者への道標にもなるものですね、もっとも「未来食堂は真似できない」というプライドにしっかり裏打ちされているので、そこはしっかりわきまえておきましょう。


【レビュアーから一言】


本書は付録的に、「事業計画書」や、未来食堂の特徴の一つでもある「まかない」のマニュアルも惜しげもなく公開されている。ネットでも公開はされているのだが、「紙」の形で広く公開するのは勇気あるな、と称賛するのみである。開店準備→開店→開店後、とそれぞれのステージごとに、思いやノウハウや課題もしっかり紹介されているので、起業家だけでなく、企業内で新規事業に関わっているビジネスマン一般にオススメです。

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日本一の人口最少県の住人。地方公務員、社会福祉法人役員を経て現在、行政書士開業中。

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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