日本が再飛躍するためのビジョンを考えてみよう ー 落合陽一「日本再興戦略」(幻冬舎)

2019年3月10日日曜日

落合陽一

t f B! P L

 最近「日本はスゴイ」「日本の実力はこんなにある」という自画自賛的な論説やTV番組が増えてきていて、たしかに、今まで気づいていなかった「日本の良さ」や、歴史の中に埋もれたしまっていた優れた人物を再発見するにはいいきっかけとなるのには間違いないのだが、自分褒めの度合いが過ぎると、かえって嘘くさくなって薄ら寒くなることがあるのは、当方だけではないはず。


失われたものや隠れていたことを発見するのとあわせて、現状を見据えながら、がっつりとした「希望のある」将来展望を語ってくれるものはないのか?、と思っていたところ現代の若きオピニオン・リーダーの落合陽一氏が、力強く「日本の再飛躍」について語っているのが本書『落合陽一「日本再興戦略」(幻冬舎)』である。


【構成と注目ポイント】


構成は


はじめに:なぜ今、僕は日本再興戦略を語るのか?

第1章 欧米とは何か

第2章 日本とは何か

第3章 テクノロジーは世界をどう変えるか

第4章 日本再興のグランドデザイン

第5章 政治(国防・外交・民主主義・リーダー)

第6章 教育

第7章 会社・仕事・コミュニティ

おわりに:日本再興は教育から始まる


となっていて、見てのとおり、日本が「復活」を遂げるために必要となる分野について、おおむね網羅して言及してあるといってよく、まず、


我々は今、デザインにしても教育にしても、あまつさえ効果不明な健康法すらも無秩序に「日本はだめで、何々に見習え」と言うばかりで、考え方の基軸がありません。我々はいったい何を継承してきて、何を継承してきていないのか。それを正確に把握した上で、今後勃興するテクノロジーとの親和性を考えていかないと、日本を再興することはできません。

日本にも考える基軸は絶対にあるはずです。我々は他の国に引けを取らない長い歴史を持ち、歴史の中で何度もイノベーションを起こしてきました。


といったスタンスには、自家中毒で酩酊することなく、隣の芝生だけを見て無駄に卑下することもなく、冷静で、偏ることのないスタンスで語ろうという意志が見えて、安心感を覚える。

とはいっても、筆者の主張は、最近のテクノロジーの動向を踏まえつつ大胆な視点から提案されるものが多く、例えば「自動運転」技術については


もし僕がマンションの1階まで下りてコンビニに買いにいったら、家との往復でだいたい15分くらいかかります。それと比べて、アマゾンに頼むのは配達コストが大きいように感じるかもしれません。しかし今後、届けてくれるのがロボットになったら、コストのことを気にしなくなるかもしれません。確かに現時点では労力の無駄なのですが、そこに人間が介在しなくなったら、もしくは、集荷と分配のバランスが整えば、コスパはペイするのです。その観点では、コンビニに行く回数は、これから減っていくでしょう


としたうえで


そう考えると、今後は、都心に住むメリットはあまりなくなってくるでしょう。あらゆるものが自動的に届くようになりますし、自動運転を使って快適にどこにでも移動できるようになります。そういったテクノロジーは、我々の移動や時間の概念を変えることでしょう。それぐらい、自動運転は我々の世界を大きく変えるのです。


といった分析がされていて、通常語られる、「運転」という視点や「AIによる人間の職を奪うもの」といった視点だけでなく、「我々の生活そのものの変化」としてとらえる、あらたな「見地」を提供してくれているし、


地方自治を推進するときに、必ず問題になるのが財源です。今の日本は、中央政府が税金を集めて、地方に地方交付税交付金としてまく形です。地方の主な税収は住民税と固定資産税ぐらいしかなく、財政的な自由度が高くありません。

そこで新たな収入を生むカギになるのが、トークンエコノミーです。地方自治体そのものをトークン化して、ICOすればいいのです。

(略)

ICOすることで、地方自治体はお金を集めて、攻めの投資を行うことができるようになります。今の財政の仕組みは、産業を誘致したり、育成したりして、それがうまくいったら、税収が増えるという順序です。後手でしか動けないモデルです。このやり方は、国が成長しているときはよかったのですが、今のような人口減少経済になると、財政を絞るばかりで攻めの一手を打つことができません。この流れを逆流させるためにも、先行投資型にモデルを変えないといけないのですが、その切り札となるのが、トークンエコノミーなのです。


といったあたりには、「仮想通貨バブル」のせいですっかり胡散臭い目を向けられてしまっている、「ブロックチェーン」の地方における可能性が垣間見えて、雲の切れ間の太陽をみるような感じがする。


このほかにも5Gの通信技術の普及による生活や働き方の激変と日本が持っている有利なポジションとか、「これからのリーダーは、一個の独立した完璧な個人である必要はありません。」という「リーダー2.0」の提案など、魅力的なサジェッションが豊富に述べられている。


できれば通読するのがいいのだが、興味のあるところにフォーカスして読んでも、もちろん大丈夫である。


【レビュアーから一言】


正直なところ、ディストピア的な未来予測や「日本はスゴイ」だけの論評ばかりだと、心寒くなるばかりなので、こうした楽天的ではあるが、しっかりと今のテクノロジーを取り込んだものは、もっと増えてきていいと思う。

「GAFA」の弊害がどうのこうの、という話があるのだが、要は、プラットフォームを握られてしまった弱みがこちらにはあるわけで、次のプラットフォーム争いに加わるには、より多くの才能が結集し、群れて行く必要があるだろう。本書の


読者のみなさんにあらためて言いたいのは「ポジションを取れ。とにかくやってみろ」ということです。ポジションを取って、手を動かすことによって、人生の時間に対するコミットが異常に高くなっていきます。


という言葉が、その道標となることを祈っておきましょうか。

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日本一の人口最少県の住人。地方公務員、社会福祉法人役員を経て現在、行政書士開業中。

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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