予測不可能な「成功」をつかみとる方法はこれ ー フランス・ヨハンソン「成功はランダムにやってくる 「クリック・モーメント」のつかみ方」

2018年11月29日木曜日

経営論

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 「成功するためには綿密に準備して、計画を立てて」とはよく言われることで、計画を立てたりする方法を解説したビジネス書は、本屋のビジネスコーナーに行けば、たくさん見つかる。多くの人がそういう類の本を買い込んで、実践を試みるのだが、多くの場合、途中で挫折してしまうのが、常であるのだが、もし、そんな計画立てが全く無意味であったとしたらどうだろう。


本書は、非常にシンプルで衝撃的な、二つの考え方をテーマにしている。

一つは、成功は私たちが考えているよりはるかにランダムに起きるということ。もう一つは、個人や組織がランダムに起きる成功をつかみ、うまく利用するためにできる行動はいろいろあるということ


と、今までの「成功に至る方法論」の秩序性や計画性を否定して、いわば、臨機応変な成功のための行動原理を教えてくれている。


【構成は】


PARTⅠ 予測不可能な世界

 CHAPTER1 成功の法則は、ある

 CHAPTER2 セリーナ・ウィリアムズ 強さの秘密

 CHAPTER3 ノキアはなぜ迷走したのか?

 CHAPTER4 空前のベストセラー小説『トワイライト』が生まれた理由

 CHAPTER5 ランダム戦略


PARTⅡ チャンスをつかめ

 CHAPTER6 ダイアン・フォン・ファステンバーグの三つのランダム戦略

 CHAPTER7 クリック・モーメントとは何か

 CHAPTER8 クリック・モーメントを起こす方法

 CHAPTER9 目的ある賭けとは何か

 CHAPTER10 目的ある賭けをする方法

 CHAPTER11 複雑エネルギーとは何か

 CHAPTER12 複雑エネルギーを利用する方法


となっていて、PARTⅠが、「成功」が起こる時の法則性について解説し、PARTⅡで、PARTⅠで明かされた、成功の法則=ランダムの法則をつかむためにどうしたらよいかを解説するという構成になっている。


【注目ポイント】

◯成功は予測できない


「成功」や「目標達成」に対する本書の考えは、世間一般のものとはちょっと違っていて、それは


一万時間の法則は、成功の秘訣をわかりやすく説明する手段として活用されてきた。どんな分野であれ、一番になるために必死に努力すれば、成功する。数多くの調査が行われ、この考え方を支持しているにもかかわらず、依然としてこの法則では説明が不十分のようである。何よりこのアプローチの仕方は、テニス、チェス、バイオリン、バスケットボールなど特定の分野にしか通用しない。それ以外の分野では、法則が破たんしてしまう


といったことで顕著である。すなわち、長い時間の努力や鍛錬がすべての分野で成功の一本道とはいえないことで、このあたりは、「一筋の道」といった求道精神を尊重する日本人はちょっと引いてしまうかも知れないな。ただ、努力が必ず報いられる、というのはかなりフィクションが混じっているのは誰しも感じているところなのだから、素直に、「努力」が効果を上げやすい分野と上げにくい分野を峻別して、それぞれの対応を考えるというのが合理的である気はする。

では、本書がおおかたの分野に通用する「成功の法則」と考えているのは、


成功はランダムに起きることがわかる。どんなときでもルールが変わるなら、成功するためにどのような戦略や戦法を使えばいいのかを予測することはできない。


であったり


私たちは、物事を分析すれば成功を手にする可能性が高まると信じ込むくせがついている。鋭い論理は成功への近道だと信じている。しかし、もし成功への道が論理的だったら、誰もがすぐにその道を発見できることになり、結局その道は効果的ではなくなってしまう。


ということで、規則性ではなく、偶然性ということを重視している。そして


論理を活用して次の動きを入念に計画すると、墓穴を掘りがちである。そうではなく、行動のなかに意図的にランダム性を取り入れればいい。自分が何をしているかは把握していると感じつつ、偶然に対しても心を開いておかなければならない。そして、偶然のチャンスを見つけたとき──すべての歯車がかみ合うクリック・モーメントが訪れたとき──には、そのチャンスに倍儲けできる準備を整えておく必要がある。


といったように、すべてを計画のもとにおこうとしないのが秘訣のようである


◯「クリック・モーメント」とは


本書によれば


そのときは気づかなくても、新しいものに目を向けさせ、違う道を選ばせ、すべてを変える決断を下させる瞬間が、わずかだが存在することも確かである。実際のところ、人生や企業の歴史を巻き戻してみると、ほかよりはるかに大きな影響を与えた瞬間、出会い、出来事、印象、洞察があったことは間違いない。私はこのような瞬間をクリック・モーメントと名づけた。


ということであるのだが、とりわけ、クリック・モーメントの特徴をあげた


①クリック・モーメントは二つの異なる概念やアイデアや人が交わるときにおこりやすい

②クリック・モーメントは予測不可能。すばらしい結果を期待するとがっかりする一方、まったく予想していなかった出来事に驚かされる

③クリック・モーメントは、幸福感、恐れ、興奮といった感情的な反応を引き出すことが多い


といったところをみると、当方的に解釈すると「潮目がかわる時」といったことかな、と思った。良きにつけ悪きにつけ、「流れ」を読むということでありましょうか。


◯「クリック・モーメント」をおこす方法


この筆者のいう「クリック・モーメント」なのだが、どうやら「努力信奉者」が推奨するような「たゆまぬ行動」があればどうにかなるものではないらしく、ちょっと変化球が必要なようで、それは


ときには現在の仕事から離れることが必要ということである。皮肉に聞こえるかもしれないが、予定にない計画外のことをする時間をスケジュールに組み込むことには価値がある。当座の目標とは関係ないことを探索する時間的余裕を残しておくべきである。自分の縛りをなくし、隠れたチャンスに気づき、大切なクリック・モーメントを受け入れられるようにしておくべき


といったように、直線的ではなく曲線的な行動が必要なようであり、


クリック・モーメントを起こしたければ、多様性のあるチーム作りがもっとも効果的だ。文化、性別、民族、分野、年齢、組織内での階級など、チームにはできる限り多くの特徴を持たせるべきである。さまざまな背景を持つ人間が集まると、予期せぬクリック・モーメントを生み出すために必要な多角的な視点を増やしてくれる


といったように、様々な価値観を受け入れて、混沌を呼び込む、といった論理的な方法論からは眉を顰められそうな方法が推奨されている。


そして、成功を引き寄せるためには、「クリック・モーメント」をうまく利用して「アイデアを実行に移し、その過程でアイデアがうまくいくかどうかの賭けにでる必要がある」とのことで、その賭けをうまくやるコツは


何回も賭ける

小さく賭ける

実行可能な小さな第一歩を踏み出す

投資収益率(ROI)ではなく、許容損失額を計算する

情熱をモチベーションにする


ということであるとのことだが、ネタバレはここまで。この詳細は原書で確認してくださいな。


【レビュアーから一言】


「一万時間の法則」が限定的だ、といわれたあたりから不機嫌になっている方もあるかとは思うのだが、そういった画一論が「成功法則」を語るには一番よくないような気がする。様々な事例を見ても「偶然性」の力は無視できないことは明らかであるから、その偶然性をどうやって呼び込み、どう味方につけるかを論じた本書はおさえていく価値があると思いますな。

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日本一の人口最少県の住人。地方公務員、社会福祉法人役員を経て現在、行政書士開業中。

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