Google仕込みの「仕事術」の真髄はーP・F・グジバチ「世界一速く結果を出す人は、なぜメールを使わないのか」(SBクリエイティブ)

2018年2月26日月曜日

P・F・グジバチ

t f B! P L

 筆者のグジバチ氏は、モルガン・スタンレーを経てGoogleのアジアパシフィック地域の人材開発などに携わり、今は企業戦略やイノベーションのコンサルティングや人事テクノロジーのベンチャーなどにも関係、といった経歴の人。その経歴にふさわしく、本書の内容も、かなりエンジン吹かし気味で、読者を駆り立てる感じであるのだが、自己啓発書というのは、これぐらいの熱気があったほうがよい。


構成は


第1章 世界より速く動くための仕事術

第2章 ロジカルシンキングなんてしている暇はない

第3章 忙しくても、10倍の結果を出すために

第4章 仕事の加速度を上げる人間関係のつくり方

第5章 必要なことを高速で学ぶ方法

第6章 グーグルの疲れない働き方

終章 自分の仕事を壊せる人が、次の時代をつくる


となっていて、本書の目指すところは一言で言うと、Google流の「常に10倍の成果をあげよう」というところなのだが、


10倍の成果を出そうと思ったら、従来の延長線上の発想ではとても間に合わないので、仕事の在り方そのものを根本から考え直さないといけない


ということになるので、本書で提案されるところも、それ相応に(意識の面で)革命的である。


ただ、その革命性がそれほど「嫌味」に感じられないのは、祖国がポーランドで、コンプレックスを抱えながらGoogleyaモルガン・スタンレーで働いていたということと、親日家ゆえの日本人ン向けにアレンジされているせいでもあるのだろう。


ただ、その提案は結構刺激的で、例えば


日本人は議論が下手と言われるわりに、分析がものすごく好き。・・ところが、どれだけ詳しく分析してあったも、結論がすっぽり抜け落ちていることがよくあります


売り上げを上げるのは、他社にはない、自社独自の商品であり、サービスです。その元となるのは、ロジックではなく、思いつきやひらめきです。数字やデータは「過去」については語ってくれても、「未来」をつくり出すことはできないのです。


と日本人の特性の「イタイところ」をついてきたり、


知能・勤勉さ・服従といったものは、すべて機械に置き換えることができます。


「AIに仕事をとられないために、今すぐできること」はひとつです、それは自ら自分の仕事をなくしてしまうこと。

つまり、自らの仕事を、テクノロジーに置き換えて、もっと速くデキないかと鑑上げることです。


今後は過去の成功例より「これから何があり得るのか」という情報を見ることが大事


といったように、我々が立っているところの足下から揺らしてくるから油断がならないのである。


ただ、本音のところは


今、個人が成功するには、大きく2つのやり方があります。ひとつはとにかく(お金を儲けたいから、お客さんを明確にして戦略的に営業する、というもの。もう一つのやり方は、自分が情熱をもっていること、世の中をよくしたいとか、こういうミッションで社会貢献したいとか、そういったことを大きな声でSNSなどで訴えていく。それで集まってきた人たちと活動していくとお金が入ってくるという方法です。実際、どちらが成功するかというABテストをやってみたのですが、実は後者でした

すべての失敗は学びになります。「勝つか」「負けるか」ではなく、「勝つか」「学ぶか」です

といったところにあるようで、儲ける・儲けないといった損得勘定でなく、生きがいとかやりがいとかといったところを評価している風情であるのを、当方は評価したい。


効率を上げることが仕事の目的ではなくて、効率を上げて何に専念するか、何をするかがポイントだよ、と思わせる仕事術の本でありました。


(追記 2018.03.06)

「世界一速く結果を出す人は、なぜメールを使わないのか グーグルの個人・チームで成果を上げる方法」には
 
話題のマインドフルネスでは、「今この瞬間」に意識を集中します。今に集中するというのは、妄想ではなく目の前の現実と向き合うということです。
よそ見をせずに、「今この瞬間」に集中すれば、最大のパフォーマンスを発揮できるのです。
実は、グーグルではこの「よそ見をしない」仕組みが用意されているのです
 
として、日常生活の、例えば、昼食・飲み会のメニューや店選び、職場に着ていく服装のチェックといった選択の時間を省いて、日常生活をシンプルにして、不要なことに頭をつかわない、つかわせないことの効用が説かれている。
 
その「よそ見をさせない環境整備」の具体例として
 
Googleのカフェテリアは無料のビュッフェになっていて、そこで好きなものを選ぶことができます。・・・同僚と飲みにいきたいときも、社内のバーを使うことができます。・・・他にもマッサージチェアやリラクゼリセーションルームがあります・・・こうしたものは、単に社員の福利厚生ということではなく、仕事以外のことを考えずに済むようになっているのです。
 
 
日常生活はできるだけシンプルにします、たとえば、僕は、黒いシャツしか着ません。・・・スティーブ・ジョブズも常に同じような服装でプレゼンをしていましたが、それは本当に大事だと思っていること以外に頭のリソースを使いたくないからではないでしょうか。
 
とある。
 
脳のもっているパワーというかリソースが有限であるのは、誰もがよく承知のことで、「多動力」で、あのパワーあふれる堀江貴文氏が睡眠時間は削らないと言っているのも、その証左であろう。
 
であるなら、企業なり組織において、他のことにリソースを使わせず、仕事に意識を集中させる方策をあの手この手考えるのは、むしろ労務担当者の責務といっていい。もちろん、Googleのような環境を一企業で整備できるところは少ないであろうが、例えば「賄い飯」とか周辺の飲食施設と協力しての飲食や酒食の提供であるとか、いわば囲い込み的な飲食環境の提供は、仕事の能率を上げる手段として見直してもいい。ただ、レベルが高く、オシャレなものを提供しないと、今時の社員は使わなくなるだろうから、どんな環境をつくるかは、若い層を含めた社員の意見をよく聞いたほうがいいだろう。
 
ひところ廃止や縮小が続いていた社食も、タニタ食堂のあたりからふたたび見直されてきているように思うが、むしろ「効率アップ」の手段として積極的に位置づけを見直した方がよいかもしれないですね。
 
もっとも、充実した社員食堂や福利厚生も社員のパフォーマンスを上げるのが主目的となると少々味気し、なによりも、「サラメシ」の中井貴一さんががっかりしそうな話ではありますが・・・

 (追記の追記)

同じく世界一速く結果を出す人は、なぜメールを使わないのか」の一節に

仕事を「持ち帰る」といつまでたっても終わりません。どうしてもその場で解決できないときでも、「今その場でわかること」「今返事できること」を見つけて少しでも進めておくべきです

テクノロジーでできることが増えた今、大抵のことはどこにいてもできます。ささいなことで「持ち帰って」いては時間をとるばかりです。

「会社が自分のオフィス」ではなく、「今、自分がいるところがオフィス」という意識をもって、「今この瞬間」で終わらせようという意識が大事なのではないかと思います。そのために使えるツールは、たくさんあります。

メールはというのは持ち帰り文化です。いったん持ち帰って検討してから返事1をする。でも、チャットというのはリアルタイム・コミュニケーションです。その場で解決します。このスピード感の違いが、仕事の面で生きてきます 

といったところがある。


この「持ち帰り」の意識に、今の日本のワークスタイルが「オフィス」中心のピラミッド型の剛い組織で、そのために長時間通勤や単身赴任が減らない、そして「仕事のスピードがあがらない」原因があるように思えてきた。


グジバナ氏の提案するところは、その場で、自分の権限の範囲で、「決めれるものは決めてしまう」という仕事のスタイルで、これが仕事をするところの自由度を高め、仕事のスピードを上げていると思う。そして、その「根幹」は仕事のやり方が「オフィス中心」なのかそうでないか、というところであると思える。


なぜなら、現場での決定を行おうと思っても、オフィス中心、つまりは物理的なフェイス toフェイスでの意思決定(物理的に集合する会議や紙ベースを中心とした稟議システムがメインシステムだよね)を本筋とする形態では、必ず「本拠(オフィス、本社)」に物理的に帰ってオーソライズしないと正式決定にならないから、そもそも現場では仮の判断しかだせないということになりかねず、これは、グジバナ氏の提案するワークスタイルとはかなり遠いところにある。

 

もちろん、欧米とは違って、社員にそうそう大きな権限が与えられるというシステムではないから、社員が個人の判断でほとんどのビジネス判断を決めるということはムリであろうが、少なくとも、チャットであるとかの正式導入で「現場」で社内の判断を求めながら「決定する」ということツールの準備とそれを認める社内慣行の整備でかなり可能になるような気がする。


特にこれからAIやRPAの導入・普及で、人間による情報収集や前例確認、あるいは単純な事務作業は「人」が必要ない環境は進展していくであろうから、「人」の役割は「決定すること」に収斂してくるのは間違いない。


「現場で決定する」というワークスタイルを、どうシームレスにつくっていくか、機械的な整備や働く上での意識面での整備を、真面目に考えないといけない時期であるように思えます。

 

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日本一の人口最少県の住人。地方公務員、社会福祉法人役員を経て現在、行政書士開業中。

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