筆者のグジバチ氏は、モルガン・スタンレーを経てGoogleのアジアパシフィック地域の人材開発などに携わり、今は企業戦略やイノベーションのコンサルティングや人事テクノロジーのベンチャーなどにも関係、といった経歴の人。その経歴にふさわしく、本書の内容も、かなりエンジン吹かし気味で、読者を駆り立てる感じであるのだが、自己啓発書というのは、これぐらいの熱気があったほうがよい。
構成は
第1章 世界より速く動くための仕事術
第2章 ロジカルシンキングなんてしている暇はない
第3章 忙しくても、10倍の結果を出すために
第4章 仕事の加速度を上げる人間関係のつくり方
第5章 必要なことを高速で学ぶ方法
第6章 グーグルの疲れない働き方
終章 自分の仕事を壊せる人が、次の時代をつくる
となっていて、本書の目指すところは一言で言うと、Google流の「常に10倍の成果をあげよう」というところなのだが、
10倍の成果を出そうと思ったら、従来の延長線上の発想ではとても間に合わないので、仕事の在り方そのものを根本から考え直さないといけない
ということになるので、本書で提案されるところも、それ相応に(意識の面で)革命的である。
ただ、その革命性がそれほど「嫌味」に感じられないのは、祖国がポーランドで、コンプレックスを抱えながらGoogleyaモルガン・スタンレーで働いていたということと、親日家ゆえの日本人ン向けにアレンジされているせいでもあるのだろう。
ただ、その提案は結構刺激的で、例えば
日本人は議論が下手と言われるわりに、分析がものすごく好き。・・ところが、どれだけ詳しく分析してあったも、結論がすっぽり抜け落ちていることがよくあります
売り上げを上げるのは、他社にはない、自社独自の商品であり、サービスです。その元となるのは、ロジックではなく、思いつきやひらめきです。数字やデータは「過去」については語ってくれても、「未来」をつくり出すことはできないのです。
と日本人の特性の「イタイところ」をついてきたり、
知能・勤勉さ・服従といったものは、すべて機械に置き換えることができます。
「AIに仕事をとられないために、今すぐできること」はひとつです、それは自ら自分の仕事をなくしてしまうこと。
つまり、自らの仕事を、テクノロジーに置き換えて、もっと速くデキないかと鑑上げることです。
今後は過去の成功例より「これから何があり得るのか」という情報を見ることが大事
といったように、我々が立っているところの足下から揺らしてくるから油断がならないのである。
ただ、本音のところは
今、個人が成功するには、大きく2つのやり方があります。ひとつはとにかく(お金を儲けたいから、お客さんを明確にして戦略的に営業する、というもの。もう一つのやり方は、自分が情熱をもっていること、世の中をよくしたいとか、こういうミッションで社会貢献したいとか、そういったことを大きな声でSNSなどで訴えていく。それで集まってきた人たちと活動していくとお金が入ってくるという方法です。実際、どちらが成功するかというABテストをやってみたのですが、実は後者でした
すべての失敗は学びになります。「勝つか」「負けるか」ではなく、「勝つか」「学ぶか」です
といったところにあるようで、儲ける・儲けないといった損得勘定でなく、生きがいとかやりがいとかといったところを評価している風情であるのを、当方は評価したい。
効率を上げることが仕事の目的ではなくて、効率を上げて何に専念するか、何をするかがポイントだよ、と思わせる仕事術の本でありました。
(追記 2018.03.06)
仕事を「持ち帰る」といつまでたっても終わりません。どうしてもその場で解決できないときでも、「今その場でわかること」「今返事できること」を見つけて少しでも進めておくべきです
テクノロジーでできることが増えた今、大抵のことはどこにいてもできます。ささいなことで「持ち帰って」いては時間をとるばかりです。
「会社が自分のオフィス」ではなく、「今、自分がいるところがオフィス」という意識をもって、「今この瞬間」で終わらせようという意識が大事なのではないかと思います。そのために使えるツールは、たくさんあります。
メールはというのは持ち帰り文化です。いったん持ち帰って検討してから返事1をする。でも、チャットというのはリアルタイム・コミュニケーションです。その場で解決します。このスピード感の違いが、仕事の面で生きてきます
といったところがある。
この「持ち帰り」の意識に、今の日本のワークスタイルが「オフィス」中心のピラミッド型の剛い組織で、そのために長時間通勤や単身赴任が減らない、そして「仕事のスピードがあがらない」原因があるように思えてきた。
グジバナ氏の提案するところは、その場で、自分の権限の範囲で、「決めれるものは決めてしまう」という仕事のスタイルで、これが仕事をするところの自由度を高め、仕事のスピードを上げていると思う。そして、その「根幹」は仕事のやり方が「オフィス中心」なのかそうでないか、というところであると思える。
なぜなら、現場での決定を行おうと思っても、オフィス中心、つまりは物理的なフェイス toフェイスでの意思決定(物理的に集合する会議や紙ベースを中心とした稟議システムがメインシステムだよね)を本筋とする形態では、必ず「本拠(オフィス、本社)」に物理的に帰ってオーソライズしないと正式決定にならないから、そもそも現場では仮の判断しかだせないということになりかねず、これは、グジバナ氏の提案するワークスタイルとはかなり遠いところにある。
もちろん、欧米とは違って、社員にそうそう大きな権限が与えられるというシステムではないから、社員が個人の判断でほとんどのビジネス判断を決めるということはムリであろうが、少なくとも、チャットであるとかの正式導入で「現場」で社内の判断を求めながら「決定する」ということツールの準備とそれを認める社内慣行の整備でかなり可能になるような気がする。
特にこれからAIやRPAの導入・普及で、人間による情報収集や前例確認、あるいは単純な事務作業は「人」が必要ない環境は進展していくであろうから、「人」の役割は「決定すること」に収斂してくるのは間違いない。
「現場で決定する」というワークスタイルを、どうシームレスにつくっていくか、機械的な整備や働く上での意識面での整備を、真面目に考えないといけない時期であるように思えます。
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